introduction

ー家族にとって自分は、A級戦犯でしたー

雨が多くジメジメとしたカビ臭い街、灰野澤。
そこが三原家の住まいである。

三原陽生は生まれてこのかた家族というものに安心を得たことがない。
忌まわしい子供部屋、両親、喧嘩の絶えない兄妹。

今年も雨の夏が来る。

不幸自慢と言われても不幸なのだし、仕方ない。
壊したいのか逃れたいのか帰りたいのか、答えもない。

物語にはまだ遠い、家族の、記憶と情景。